2026/3/23 12:00

南葛SCのパートナーとして、チームとともに戦ってくれている企業をピックアップ。今回は、2025シーズンにパートナー契約を締結した有限会社東秀興業を紹介します。設立30周年を迎えた企業の歩み、建設業界の現状、仕事に臨む際に大切にしている考え方などについて、営業担当の玉城峻吾(MF19)も同席の上、江幡良太代表取締役社長に話を聞きました。
写真=野口岳彦
小学生の頃は野球少年だった。一方で、学年が上がっていくたびに、国内におけるサッカー熱の高まりを感じたという。小学校を卒業し、中学校へ入学したのは1993年。日本にプロサッカーリーグが誕生した年である。江幡良太社長が当時を振り返る。
「中学生になるタイミングで、ちょうどJリーグができたんです。それまでは野球を続けていましたが、当時はサッカーへの憧れもあり、中学校ではサッカー部に入部しました。私は“見る派”よりも“やる派”だったので、Jリーグの試合を見に行く回数は決して多くありませんでしたが、チームではヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)が好きでした。選手では、前園真聖さんに注目していましたね」
江幡社長は1980年生まれ。その翌年、『キャプテン翼』の連載がスタートした。
「『キャプテン翼』、大好きでしたね。子どもの頃は漫画を読み込みました。好きなキャラクターは、やはり(大空)翼くん。必殺技も印象に残っています。ツインシュート、三角蹴りディフェンス、スカイラブハリケーン。中でも、松山(光)くんのイーグルショットがお気に入りでした。というのも、イーグルショット以外は自分にはちょっと真似できなかったというか、何となくでも近い雰囲気を出せるかなと思って、『イーグルショット!』って口にしながらボールを蹴っていました(笑)」
高校卒業後の進路については、もともと興味のあった建築を軸に据えた。専門学校に入学して、2年間にわたり基礎から応用まで様々なことを学んだ。
これまで見てきた中で、特に印象深い建物の一つに、江幡社長は水戸芸術館のシンボルとして建てられた塔(タワー)を挙げる。水戸市制100周年を記念して、高さは地上100メートル。1辺9.6メートルの正三角形が57枚組み合わさった、三重螺旋の独特なデザインが特徴だ。
建築物に関わる魅力について、江幡社長はこう語る。
「私自身、“達成感”を味わうことが好きなタイプなんです。スポーツでも同様で、分かりやすいところで言えばマラソンですね。スタートからゴールまで、走っている最中は地獄にいるかのようにつらい。でも、フィニッシュしたあとの気持ちのよさは、やはり格別なものがあります。建物についても、何もないところから作り始め、でき上がるまではしんどいこともたくさんある。でも、その過程を一つひとつ積み重ねることで、完成を迎える瞬間には何物にも代えがたい“達成感”が得られるんです」
専門学校卒業後の2001年、有限会社東秀興業に入社した。茨城県を中心に、足場工事・解体工事などを展開する会社だ。入社から数年後に役員に任命され、元号が“令和”になった2019年から代表取締役社長を務めている。売り上げは右肩上がりに推移。会社の強みの一つには、自身も20代前半から取り組んできた“提案力”を挙げる。

「建築の知識を生かしつつ、製図を行うツールで足場施工の図面を描き、お客様に提案し続けてきました。我々が拠点とする茨城県ひたちなか市周辺では、早い段階から図面を描き始めたほうだと思います。その図面をもとに、こういう方法はどうか、こういうやり方もあると、コストダウンの部分も含めて、お客様の理想と現実を近づけていく。打ち合わせ時の“提案力”は、東秀興業として長けている部分なのではないかと思っています」
十数年前と比べると、図面を描く力、提案する力を持つことは業界内でスタンダードになりつつある。その中で東秀興業では、独自性と専門性をさらに高次元で掛け合わせられる、ハイブリッドな人材の育成に力を入れているという。
「建設職人の誰もが、図面を描けるようになるとは限りません。本人の意向もあるし、向き不向きもあるでしょう。ただ、従来の型にとらわれることなく、新しいことに取り組んでもらいたい。武器を持つ人が増えれば増えるほど、会社も自ずと成長していくと思っていますから。この先は足場だけでなく、建設業界内の新たな分野にも挑戦いきたいし、そのためにも独自性と専門性を持った人材が必要。私としては、新たな人材を外から取ってくるというよりも、社員全員のさらなる成長に期待したい。だから、初めから無理と考えず、資格の取得などにも積極的にチャレンジしてもらいたいと考えています」
常日頃から、江幡社長はこう考えている。「東秀興業だけがよければいいというわけではない。同業他社も含め、業界全体が盛り上がっていくことが大事である」と。建設業界の過去と現在の比較については、実体験も踏まえてこう表現する。

「だいぶよくなりました。業界全体が、本当の意味で安全の重要性を意識するようになってきたんです。以前は危険な現場、危険な作業がたくさんありましたから。それが今では、『危険なこと=おかしなこと』と捉えられている。本当によくなったなと思います。また、労働者を取り巻く環境も改善されつつあります。社会保険への加入や福利厚生の整備など、そういった要素が当然のように組み込まれる業界になってきたという感覚がありますね」
「ただ、それでも……」。江幡社長は話の方向を変えて、建設業界が抱える課題、そして東秀興業の未来について続けた。
「業界全体の現状として、なかなか若い人が入ってこないんです。我が社としても、もっともっと若者が入ってきやすい会社にしていきたい。そこで考えているのが、社員全員が『“人間力”を高められる会社』を目指すということ。実際のところ、この業界には勉強が得意ではない、好きではないという労働者も少なくありません。それでも、仮に勉強ができなくたって、“人間力”があれば生きていけるし、社会の中で前を向いて進んでいけると思うんです」
江幡社長が言う“人間力”を細分化していくと、「常識を知る」や「ルールを守る」なども含まれる。「そんなことは当たり前だろう!」と思われるかもしれない。それでも、足場工事や解体工事に臨む際、これら“当たり前のこと”は、最も重要な要素の一つになるのである。
「先ほども触れたとおり、業界全体として昔より危険ではなくなっています。これは間違いない。ただ一方で、仕事の内容的に、ルールを無視すればケガや事故につながる恐れがあるのも事実です。基本的に、ルールをしっかり守っていれば、大ケガをするようなことはないと思っています。つまりポイントは、一人の人間として『決められたことをしっかり守れるか?』というところ。『きちんと命綱をつけているか?』『近道だからと言って歩行禁止エリアを歩いていないか?』。かつての姿と比べて、『ものすごく安全な業界になってきました!』と私も大きな声で言いたいし、それをアピールするためにも“ルールを守る”という当たり前の部分は、これからも徹底していきたいと思います」
業界と東秀興業の将来について語る時、江幡社長は“人間力”とともに、“信頼関係”というもう一つのキーワードを挙げた。
「我々の業界の仕事は、AI(人工知能)には任せられないものだと思っています。人と人が“信頼関係”を構築して、お互いを信じて取り組まなければ作業は遂行できないし、それができない場合はやはりケガや事故につながります。例えば、足場を組み立てる際に使う部品を他人に預ける時だって、その人のことを本気で信頼できていなければ手を離せない。こういった小さなことの積み重ねが、我々の業界、我々の仕事を支えているのです」
建設現場で足場を組んでいく。当然ながら1人や2人で完結できる作業ではない。現場のスタッフが一体となり、一つのチームとして稼働する必要がある。そのためにも、江幡社長が大切にし、社員にくり返し伝えていることがある。それが“挨拶の重要性”だ。
「現場に行くと、挨拶をする人としない人って、くっきりと分かれるんです。この業界に限ったことではないかもしれませんが、挨拶が苦手な人って意外と多いんですよね。現場で挨拶をしない人とすれ違うと気分がよくないし、お客様に対してもよくない印象を与えてしまう。やはり、“仕事ができる・できない”の前に、しっかりと挨拶ができるようにならないと。その重要性は、社員を集めた会議の場でもしつこく言い続けているつもりです。現場のスタッフ同士はもちろん、スタッフとお客様の間で信頼関係を構築するための第一歩として、挨拶の徹底についても引き続き追求していこうと思っています」
東秀興業が南葛SCとのパートナー契約を締結したのは、2025年8月のことである。そのきっかけは、江幡社長にも負けないくらいの熱量で、“挨拶の重要性”を南葛SCの選手やスタッフに説き続けている岡野雅行事業本部長との出会いだった。
「同じく南葛SCのパートナーで、埼玉県三郷市にある株式会社OGISHIさんが開催された安全大会に参加しました。その安全大会で岡野さんが講演をされていて、ありがたいことにご本人とコミュニケーションを取る機会に恵まれたんです」

パートナー契約締結後、東秀興業の担当を務めているのが玉城峻吾だ。江幡社長の話を聞きながら、“人間力”の大切さを改めて実感したといい、南葛SCに所属する2選手を例に出しながらこう話す。
「江幡社長がおっしゃっていた“人間力”という言葉。サッカー選手で考えてみると、結局のところ、選手とはいえグラウンドを一歩出たら“ただの一人の人間”なんですよね。その点で、江幡社長が属する建築業界はもちろん、サッカー界でも“人間力”を向上させていく必要があると思うんです。南葛SCで言えば、プロサッカー選手というキャリアを長く続けている今野泰幸選手や大前元紀選手を見ると、日本代表やJリーグのトップレベルで活躍してきた選手は、やはりサッカー選手である前に“一人の人間”としてすごくしっかりしている。だからこそ、“人間力”という言葉にはとても共感できました」
2026年、東秀興業は設立30周年という節目の年を迎えた。ここまでの歩みについて、「30年の中で最も大きなトピックは?」「企業として最大のターニングポイントは?」と投げ掛けた。江幡社長は「それが特にないんですよね」と即答し、こう続けた。
「この30年間は、一つひとつ、目の前の仕事をしっかりこなすことだけを考えて進んできました。同時に、常に新たな分野に挑戦することも心掛けてきたつもりです。足場工事・解体工事という同じジャンルであっても、いつだって新たなステージに挑み続けようと。その意味では、どんな時でも目の前の仕事に夢中になり、すべてに全力で取り組もうという姿勢を維持してこられたことは、我が社にとって大きかったのかもしれません」
南葛SCの風間八宏監督は、よく試合前にこのようなメッセージを選手たちに伝えている。
「どんな試合も一つひとつ全力で臨もう。いつも言うように、“大きい試合”も“小さい試合”もない。目の前の試合にどれだけ集中できるか。これが何よりも重要だ」
「試合」を「仕事」に置き換えてみる。すると、江幡社長と風間監督の信念が合致することがよく分かる。

「どんな仕事も一つひとつ全力で臨もう。いつも言うように、“大きい仕事”も“小さい仕事”もない。目の前の仕事にどれだけ集中できるか。これが何よりも重要だ」
パートナー契約締結に際し、江幡社長は南葛SCの将来を見据えて、「『キャプテン翼』から誕生したチームが、Jリーグというカテゴリーまで登りつめたら本当に面白いだろうな」と期待を膨らませたという。そして、風間監督就任3年目の南葛SCについては、「2026シーズンはこれまで以上に攻撃的なサッカーを見せてほしい」と笑顔でその思いを口にした。
どんな試合もどんな仕事も一つひとつ全力で――。東秀興業と南葛SC。業種は異なっても、追い求める姿は変わらない。南葛ファミリーの一員として、お互いのスタイルとスタンスに共感し合いながら、この先もそれぞれのフィールドで進化を続けていこう。
【会社概要】
[会社名]有限会社東秀興業
[事業内容]とび・土工工事業・解体工事業・重量物搬入・据付工事・鉄骨工事
[所在地]〒312-0041 茨城県ひたちなか市西大島2-6-31
[第1資材ヤード]〒311-0133 茨城県那珂市鴻巣字東風谷3233-1
[第2資材ヤード]〒311-0134 茨城県那珂市飯田字上新田西2796-1
[TEL]029-275-2979
[FAX]029-275-3016
[設立]平成9年6月2日
[資本金]1,000万円
[代表取締役会長]青木進
[代表取締役社長]江幡良太
[従業員数]25人 協力会社50人
[建設業許可]茨城県知事許可(般-04)第26282号
[取引金融機関]常陽銀行 ひたちなか支店、茨城県信用組合 田彦支店、筑波銀行 ひたちなか支店
[関連会社]株式会社ジーエム・コーポレーション
[所有設備]2tユニック1台、4tユニック3台、8tユニック2台、10tユニック1台、2t平車1台、各種枠組足場材、各種ブラケット足場材、単管足場材、吊り足場材、各種シート、ネット関係など
[有資格者]一級建築施工管理技士1名、一級土木施工管理技士1名、二級土木施工管理技士1名、登録鳶・土工基幹技能者7名