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風間八宏新監督が思い描く未来とは南葛SCの新たな挑戦

2024/4/3 22:19

※この対談は『キャプテン翼マガジン vol.19』に掲載されたものです。

2023年11月7日、南葛SCは2024シーズンから風間八宏氏がトップチームの監督及びテクニカルダイレクターに就任することを発表。クラブが新たに取り組む挑戦について、風間新監督と『キャプテン翼』の原作者であり、南葛SCのオーナー兼代表取締役社長の高橋陽一先生が語り合う。

インタビュー=岩本義弘
写真=野口岳彦

■サッカーと地元のことを高橋先生は心から愛している(風間)

――高橋先生が風間新監督を初めて知ったのはいつ頃ですか?
高橋 1979年、風間監督は日本で開催されたFIFAワールドユース(現・U-20ワールドカップ)に、高校生ながら20歳以下の日本代表として出場していました。あの大会がきっかけで風間八宏という選手の名前を知りましたね。
風間 当時は高校3年生、17歳の時でした。
高橋 ディエゴ・マラドーナがゴールデンボール(MVP)に選出された大会でしたね。

――お二人が初めて会ったのは?
風間 テレビ番組の収録で何度かお会いしているはずなんですが、いつもお互いに挨拶程度だったんです。ですから、高橋先生ときちんとお話をさせてもらったのは、南葛SCの監督就任のオファーをいただいた時が初めてでした。

――高橋先生に対しては、どのような印象を持ちました?
風間 サッカーのこと、生まれ育った東京都葛飾区のことを、心から愛している方だなと。『キャプテン翼』の原作者として、世界中にその名が知れ渡っているにも関わらず、高橋先生のサッカーや地元に対する思いは、根本がしっかりしているし、まったくブレがない。話を聞きながら、このチームの指揮を執るのはおもしろそうだなと感じましたね。
高橋 僕としては、監督を引き受けてもらいたい一心で、とにかくアピールしようと(笑)。もちろん、話を盛るようなことはしていませんが、僕自身が思っていることを正直に伝えさせてもらったつもりです。

――風間監督と『キャプテン翼』の出会いはどのようなタイミングでしたか?
風間 たしか大学生の頃、漫画にもアニメにも同じようなタイミングで巡り会った気がします。『キャプテン翼』の最新作を読むために、『週刊少年ジャンプ』が発売されるのを楽しみにしていましたし、テレビでアニメも見ていました。

――聞くところによると、風間監督の長男・宏希選手(ザスパ群馬)、次男・宏矢選手(ジェフユナイテッド千葉)とともに、お孫さんも『キャプテン翼』を見てくれているそうですね。
高橋 とてもうれしいです。
風間 風間家では、孫まで3代そろって『キャプテン翼』を見ています(笑)。中でも、長男と次男が『キャプテン翼』を見始めたのは、僕がドイツでプレーしている時期でしたから、それぞれ5歳と3歳だった頃。2人はテレビでドイツ語が流れる『キャプテン翼』のアニメを見ていました。

■風間監督が就任することに大きな喜びを感じています(高橋)

――風間監督は、南葛SCに対してどのようなイメージを持っていたのでしょう?
風間 以前からクラブの名前は認識していました。その上で、島岡健太や森一哉といった、もともと親交のある人物が監督を務めたことで(島岡監督は2020年、森監督は2021年~2023年4月に南葛SCを指揮)、徐々に親近感が芽生えました。社会人リーグのクラブは、どのようなサッカーを展開したいのか、どのようなステージを目指していきたいのかが、クラブによってずいぶん異なるような気がします。でも南葛SCについては、島岡と森からいろいろと話を聞く中で、描いているビジョンがとても明確だと感じていました。ただ単に1つ上、2つ上のカテゴリーに昇格したいというわけではなく、しっかりと地域に根ざしたクラブになり、将来的には日本国内はもちろん、世界中にもその名を轟かせるクラブになることを目指している。今回、そのようなクラブから監督就任のオファーをいただいたわけですから、僕としてもとてもありがたいことでした。

――2024シーズン以降の南葛SCのビジョンを改めて検討する上で、高橋先生は「“ボールはともだち”というテーマを引き続き大事にしていきたい」と話していました。
高橋 そうですね。南葛SCのビジョンに共感してもらい、こうして風間監督にオファーを受けてもらうことができ、僕としても大きな喜びを感じています。むしろ、引き受けてもらえると聞いた瞬間には、「え! 本当に?」という言葉が出てしまったくらいです(笑)。風間監督に指揮を執ってもらうことで、“ボールはともだち”というイメージを、ピッチ上でより表現できたらいいなと期待しています。
風間 監督を引き受ける際には、クラブが思い描くビジョンやテーマが何よりも大事になってくると考えています。だから、「すべてのことを監督にお任せします」というスタンスのクラブで指揮を執るというのは、個人的には難しさがあると感じています。一方で、明確なビジョンがあり、フロント、スタッフ、選手、さらにはファン・サポーターやパートナーの皆さんが同じ絵をイメージしつつ、みんなが一体となってその絵をキャンバスに描いていこうと取り組む南葛SCは、もしかすると日本国内では稀有な存在と言えるかもしれません。その点で、南葛SCでの取り組みにはスムーズに入っていけるような感覚を持っていますし、僕としてもとても楽しみにしています。

■南葛SCというクラブに大きな未来を感じた(風間)

――風間監督が抱く、監督としてのポリシー、南葛SCの監督を担う覚悟を聞かせてもらえますか?
風間 僕が大切にしているのは、〝どう勝つか?という部分。すべての試合で対戦相手の戦い方に合わせたり、相手のよさを打ち消すようなプレーばかりをしているようでは、ピッチ上の選手たちも見ている人々も、サッカーを存分に楽しめないのではないでしょうか。だからこそ、〝南葛SCならではのスタイル?を南葛ファミリー全員で作っていかなくてはならないと思っています。どのようにして点を奪うのか、どのようにして勝利を収めるのか。クラブとしての利益、選手個々の利益、ファン・サポーターやパートナーの皆さんの利益を追い求め、あらゆる方法を模索しながら、南葛SCのスタイルを構築していきたいと思っています。
高橋 そのような意気込みを語ってもらえてとてもありがたいですし、来シーズン以降の南葛SCがどう進化していくのか、本当に楽しみです。
風間 南葛SCの監督就任に関するオファーを受けた大きな理由の一つは、南葛SCというクラブに大きな未来を感じたことです。さらには、クラブ全体がしっかりと前を見据え、ここまで一歩一歩進んできた経緯。そして南葛SCには『キャプテン翼』とともに、何物にも代えがたい夢がある。誰もなし得なかったチャレンジを、みんなで成功させようという一体感を感じたので、ぜひ高橋先生らと一緒に仕事をさせてもらいたいと思いました。

■本当に1戦1戦で全力を出し尽くす必要がある(高橋)

――風間監督は川崎フロンターレ、名古屋グランパスを率いた頃から、若手の登用に積極的でした。
風間 クラブを一つのグループとして考えれば、正直なところU-18がどのようなカテゴリーに属しているのか、どういう結果を残しているのかという部分は、決して大きな問題ではないと思っています。大事なことは、クラブのアカデミーから、どれだけ優秀な選手をトップチームへと輩出できるかどうか。だから、可能性のある選手は、高校生であろうともどんどんトップへ上げていくべきだと考えていますし、より高いレベルで取り組むことで、若い選手は大きく化けますから。例えば菅原由勢。名古屋を率いていた当時、彼を高校2年生の頃からトップで起用しました。気がつけば、あっという間にオランダに戦いの舞台を移し、今では日本代表に定着しています。名古屋時代でいえば伊藤洋輝もそうだし、川崎F時代には谷口彰悟、三好康児、田中碧のような10代や20代前半の選手に、適切なタイミングで刺激を与えることで、選手として着実な進化を遂げました。

――南葛SCには、稲本潤一選手をはじめ、ベテラン選手も多く所属しています。
風間 イナ(稲本選手)のことも十分に伸ばしていけると思っています。ただ、選手起用に際し、僕はキャリアで区別することはありません。技術や能力が同じようなレベルにあるのならば、おそらく若い選手を使うことになるでしょう。

――稲本選手は、2024年から“選手兼コーチ”という立場になります。
風間 先日、イナと今後の取り組み方について少し話をしました。僕からは、彼の性格を認識した上で、「まずは選手という立場をそのまま続けてほしい」「お互いにとってもクラブにとっても、よりよい形を作り上げていこう」と伝えました。将来を見据え、イナがイメージしていることもあると思いますし、シーズンを進めていく過程では、監督である僕のほうから彼に望むことも増えていくと思います。だから、みんなにとって最適な形を一緒に作っていこうと言葉を交わしました。

――高橋先生から風間監督へ、関東サッカーリーグ1部を戦う上でのアドバイスを送ると?
高橋 過去2シーズンにわたり関東リーグ1部を戦ってきましたが、どの試合も“なめてかかってはいけない”ということが挙げられると思います。いい加減な気持ちで戦っているチームは1つもありませんし、本当に1戦1戦で全力を出し尽くす必要があると思っています。
風間 ありがとうございます。これまでサッカーをしてきて、1試合たりともなめてかかったことはありません。むしろ、なめてかかれるくらいまで、選手とチームのレベルを上げていきたいと思っています。
高橋 楽しみにしています。

――読者の皆さん、南葛SCのファン・サポーターの皆さんへ、風間監督からメッセージをお願いします。
風間 『キャプテン翼』と言えば“ボールはともだち”というフレーズが最も有名です。僕自身も「いかにボールに言うことを聞いてもらうか」「いかにボールと仲良くなれるか」というテーマを持って、小さな頃からずっとボールを蹴ってきました。自分が監督を務めさせてもらうからには、南葛SCの選手たちにも、グラウンドで“ボールはともだち”という言葉に合ったプレーを表現できるようになっていってもらえればと思っています。ファン・サポーターの皆さん、南葛SCのチャレンジを一緒に楽しみましょう。これからよろしくお願いします。